
恩と恋の板挟みに悩み、決断を下した話
「奇しき色の大鹿」についてのご紹介。
あらすじ
昔、九州の山国でのお話。
ある村の長者の一人娘は大層な美人で、村の人々は長者の家を押し掛け、覗き見していました。
ところがある日、娘はパタンと姿を見せなくなりました。
(どうした事だろう)
娘に恋する村の若者の一人、「平作」がどうしても原因が気になり、毎日屋敷を見て回りました。すると、一人のお医者様が屋敷から出てきました。
あっ…
平作は察しました。娘は重い病気に罹ってしまったのです。
(どうにか手立てはねえものか)平作は思考を凝らしますが、名案は何もなし。其れから間も無く大雨が降り、川が氾濫。
平作はなんと川に流され、滝から落ちかけます。
(し、死ぬ…!)
その時、
眩い光を帯びた鹿が平作を助けてくれたのです。
「あぁ、貴方は命の恩人じゃあ、何でも言うことを聞きます」
「ん?別に礼など要らぬ。ただ、私の事を村のものには話さないでほしい」
「ははっー!」
そうして、村に戻った平作。看板の前に人集りが出来ています。「平作でねえか、おめえ生きてたんか^^」軽い連中です。
「何見てるんだ」
「奇しき色の大鹿を長者様が探しているだとか。この鹿の血を飲ませれば娘さんの病気も治るそうだ」
「…なんと」
_____平作は直ぐ家に帰り、悩みました。
(恋か恩義か)
平作が取ったのは「恋」でした。
鹿の居場所を長者に伝え、早速鹿狩りに出発したご一行。
鹿は一行に怯える様子もなく、凜然と佇んでいました。
「命は惜しくはない。…一つ教えてくれ。私の居場所を言った者が誰か教えて欲しい」
(…っ)
命の恩人を裏切った平作は自責の念に駆られ、とうとう名乗り出た。
「すまねえ、大鹿様。オラだ、命の恩人の貴方を売ったのはオラだ!」
涙を流し、額を地面に擦り付け、謝罪をする平作。
長者も流石は長者の器と言うべきでしょうか、平作の様子を見て、「…私に鹿を狩る事はできない」と言って引き返して行きました。
…が、不思議な事に長者の娘は家に帰ると体調が良くなっており、2、3日もすると元の元気な姿に戻りました。
その後、平作は姿を消してしまいました。
感想
「命の恩人を売ってしまった男のお話」
どちらが正解という選択でもなく、どちらを選んでいたとしても平作にとっては深い後悔が残った事でしょう。
然し、(平作にとって)バッドエンドとは言い切れず、平作は自分自身を悔い改める為に“修行”に出た可能性もあります。
いつか、長者の娘さんに見合う様な立派な男になって鹿さんと再会して欲しいものです🤔
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