
今回はグリム童話「がちょう番の女(娘)」を綴っていきます!
あらすじ
むかしむかし
ある王国に美しく、優しい王女が遠い国に嫁ぎに行くことになりました。
王女と従者
お妃は自身の血が三滴付いたハンカチと、人の言葉を喋れる馬ファラダを王女に渡し、一人の従者をお共につけました。
この従者が問題児。
顔も性格も王女とは似付かず醜悪なのに、名前だけは王女と一緒なのです。
王女は途中で喉が渇き、「済まないが、水を一杯汲んでくれ」と言っても従者は従わず
「どうぞ、ご自分で」
と言って腹這いになる仕草をして茶化す始末。
「まぁ」 王女も多少はムッとしたでしょう。が、怒りもせず王女は自ら屈んで川の水を飲みました。
その時!
ハンカチを川に落としてしまったのです。
それを見た従者は「しめたっ」と思い、持っていた凶器で王女を脅迫します。
「さぁ、服と馬 全てよこしな!」
従者は王女から服と馬を交換して王女になりすましたのです。
なんという性悪女!
そのまま従者は王女として城に迎え入れました。
「おーほっほっほ」と、王女に相応しくない高笑いをして。
ガチョウ番として…
さて、本物の王女はガチョウ番として雇われる事に。なんという落差!
「王女は偽物だ!偽物だ!」
喋る馬ファラダは真実を叫びました。
「じゃまねっ」
偽王女は屠殺人にファラダの斬首を命じ、ファラダの首は飛びました。
「まあ、なんと非道い事を」
ガチョウ番の王女はしくしくと泣き、「せめて」と、言ってファラダの首を門の下で留めて貰うように哀願しました。
流石に同情したのか、それを聞いた役人はファラダの首は門の下に留めました。
ガチョウ番しか通らないような薄暗い、門の下に。
____ファラダは生きていたのです。
「心配しないで王女様。いつかきっと良くなるから」
ファラダは王女を励まします。
「おい、あのガチョウ番の女、馬の首と喋ってるぞ。しかも見てみろよ。アレは上玉だ」
喋る馬とガチョウ番。奇妙な二人の姿は噂になりました。
それは国王と王子の耳にも入りました。
「面白そうだ。見に行ってみよう」
王子はガチョウ番の顔を見ました、すると吃驚!
見窄らしい格好に似付かない気品ある美しい顔立ちと、見るものを圧倒させるオーラ!
(只者ではないっ…!)
ガチョウ番の娘を見た王子はふと、自らの妃(偽)と比べてしまいました。
(…いや、比べるのも烏滸がましい)
この娘とは「持って生まれた素質が違う」と、まで思いました。
が、どれ程の者であっても、ガチョウ番。王子は無念に思い、その場を立ち去りました。
真実
月日が経ったある日、ガチョウ番の娘は無人のストーブの前で告白します。今までの出来事を。
「どうか、神様聞いてください____」
誰に聞かせる訳でもなく、ただ告白しました。全てを。
が、聞いていたのです。
国王が煙突から!なんと、このストーブの煙突は国王の部屋まで伸びていたのです!
「そんな事が…」
真実を知った王子はショックで震えました。偽王女が部屋に入ってきました。勿論煙突の事は知りません。
罪と罰
「君はどう思う。ある人間を罰したい。
主君に成り済まして不忠を働いた人間だ」
偽王女は声高らかに言いました。
「まあ、なんと非道。決まってますわ。
素っ裸にして釘の入った樽に入れて、二頭の馬で引き回したらいいでしょう。」
「…わかった。そうしよう」
「楽しみですわ。早く見てみたい」
happy end
こうして、本物の王女様と王子様は結婚して幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。
教訓
このお話はドイツでは有名らしく、ドイツの大学ではこのガチョウ番の像にキスをする慣例もある。
グリム童話らしい、勧善懲悪物語。
その後偽王女、基従者がどうなったかはお察しの通り。
正しいながら、矢張りグリム童話はどこか残酷な面もある。だけど、そこが魅力的。