
今回は哲学家「シオラン」の思想を簡潔に解説した本
「生まれてきたことが苦しいあなたに」の紹介です。
どんな思想なの?
一言で言えば。
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暗い。
シオランの思想は「ペシミズム(悲観主義)」であり、一貫して
ネガティブ
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だけど私達が生きている世の中は決して“幸せ”ばかりではありません。
人を蹴落とし、悪辣な笑みを浮かべ、常の“競い合っている” 残酷で、暗く陰鬱な世界だからこそ共感出来る部分も数多くあります。
「こんな世界もう嫌だ…」
そんな世界に疲れた、嫌悪した時に逃げ場をくれる、ある種の救いの思想でもあります。
同じく厭世、悲観主義とされる「ニーチェ」や「ショーペンハウアー」と比べてもパンチが効いてます。
もはやドン底の暗さです。だが、それが良い。
怠惰の尊さと社会
シオランは一貫して「怠惰」でありたいと告白しています。
私は働いて自分を破壊するよりも、パラサイトの生活を送りたかった。
p64
不毛、嫌悪。仕事ができない。観念めいたものすら生み出す事ができない。感電死した脳髄。
p69
元祖働いたら負け!一貫して働きたくない主張!
憂鬱な朝。布団で寝ていたいという気持ち、
とっーー
ても
共感出来ます‼︎
(`・∀・´)
だけど、許してくれない。
この世知辛い、“世間”という悪魔は!!!
怠惰という存在に対する世間の目は厳しいものです
社会というものができて出来て以来、そこから逃れようとする者は追害され、嘲笑された。
君がひとつの生業を、名前の下につける肩書を、君の虚無の上に捺す印象を持ちさえすれば、あとは何をしようと構わないのだ。
(俺は何もやりたくない) などと叫ぶ大胆さは、誰一人持ち合わせていない。
____世間の人は、あらゆる行為から解放された精神に対してより、人殺しに対するほうが寛大である。
p77
七つの大罪「怠惰」
其れは世間からすれば、「人殺し」にすら劣る無意味な存在として阻むのだ。
社会という存在は一見整備されている様に見えるが、其の実無秩序で、残酷なのです。
シオランにとって社会とはどの様なものか?こう綴っています。
生きるためには奴隷になるか、暴君になるか_____社会は牢獄なのである。
歴史の暴虐
第四章「文明と衰退」
歴史を学べば、その記述の残酷さに目を背けたくなるものです。
「もう少しうまく言えばこうなりますかね。つまり、歴史とは論理の否定であると。歴史を究め、歴史について考えるなら、人はどうしてもペシミストにならざるをえない。(中略)
40歳ころになって、それまで知らずにいた歴史を発見したんです。そう、衝撃でしたね。
それは考えうる限りで最大のシニシズムの授業ですよ。
p179
戦争、饑餓、紛争、貧富、勝敗…
エトセトラ、エトセトラ…。
哲学者ヘーゲルはこう綴っています。
「人間が歴史を学んで分かることは、人間は歴史から何も学ばないということだけだ」
一体人類はいつ、“歴史”を学ぶのでしょうか…。
人生は虚しい
一番好きな章立て 第五章「人生のむなしさ」!
シオランが人生のむなしさについて語った言葉は数えきれないほど!
その一部を紹介。
40年以上前の女優の写真を見て
「誰がこの女優のことをまだ覚えているだろうか」
p222
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時間に対する不安は、哲学者などの本を読むよりもずっと前に、たとえば疲れたとき、ひとりの老人の顔をじっと見つめている時に始まる。(中略)まるで、時間がひとつひとつ皺に堆積し、生成が錆びつき、持続が年老いたかのようだ。
p223
私達が行った全てのことはいつかは無と化し、消えてしまいます。
生まれて、ただ死に向かうだけ…
諸行無常。人生とはなんて儚いものでしょう。
反出生主義
シオランは仏教、老荘思想、エピクロス派、ドイツ神秘主義、ヴェーダーンタ哲学など様々な思想を学びました。そして出した結論、其れが_____
「反出生主義」
「人間は産まれない方が幸せ」
人は産まれるから不幸な目に合う。
旧約聖書にもこの様にあります。
「最も幸福な者は産まれなかった者だ」
コヘレトの言葉
逆に捉えれば、死とは決して恐れる者ではないのです。
死は全てを無に帰す。それは最大の安息ではないのでしょうか?
シオランは死についてこう綴ります。
成功を収めなかった者、成功への執念を燃やさなかったすべての者にとっては、一個の褒章である。
p262
死は解放。
だが、世に言う”勝者“にとっては全てが無に帰すとはなんて痛手だろう。強烈な平手打ちだ!
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン
注意していただきたいのが、シオランは決して“自殺”という事を推奨していないので其処だけは履き違えない様に…。
ペニシズムは落ち込んでいる時にそっと語りかけてくれます。
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この、くそったれな世界を生きましょう。
…だらだらとね‼︎
シオラン思想の入門書
「生まれてきたことが苦しいあなたに」
是非読んでみてください!
生きているうちに