今回は落語「野ざらし」のご紹介!

あらすじ
ある夜、八五郎という男が長屋で寝ていると、隣から女嫌いで知られた浪人、尾形清十郎から若い女の声が聞こえます。
翌朝、八五郎は清十郎を問い質します。
「おい、昨日お前の家から女の声が聞こえたぞ、お前は女嫌いではなかったのか、この食わせ者め」
清十郎は惚けていますが、八五郎は「ノミで壁に穴を開けた」という事を明かします。
観念した清十郎は白状します。
「あれはこの世の物ではない。まぁ、聞け。一寸前に向島で釣りをした帰りの事だ。
野ざらしになった髑髏(しゃれこうべ)を見つけてな。俺は哀れに思って、酒をかけて手向けに一句詠むなど、ねんごろに供養してやった。
すると、あの骨の幽霊が昨晩礼をしてくれたのだ」
それを聞いた八五郎は興奮。
「あんな美人が来てくれるなら堪らない!幽霊だってかまわん!」八五郎は叫んで、清十郎から釣り道具を借りて、酒を買って向島に行きました。
向島に沢山の釣り人が。
(こいつらも狙ってやがる)と、勘違いした八五郎は橋の上から叫びます。
「おい、骨は釣れたか!どうだ、若いか?!年増か?!」
(なんだあいつ)
釣り人たちは何のことかと、首をかしげます。
「釣れぬなら俺が釣るまでよ」
そう言って八五郎も釣りを始めました。女の来訪を妄想する歌を歌いながら。
そのうち、自分の鼻に釣り針が引っかけ、「こんな物が付いてるからいけねぇんだ。とっちまえ」と言って、釣り針を川に放り投げてしまいます。
多くの演じ方ではここで噺が終わる。
馬の骨か?!
この噺にはまだ続きがあります。
八五郎は釣りを諦め、アシの間を手で掻き分けて探す事に。すると髑髏を見つけました。
(よしきたっ)
持っていたお酒を全てかけ、髑髏に自分の住所を言って「今晩来てくれ」とお願いします。
____
それを屋形船の中で聞いていた幇間(太鼓持ち)の新朝は八五郎が普通の生きている女とデートの約束をしているのだと思い、仕事欲しさで八五郎に家に向かいました。
(さて、どんな別嬪がきたかっ)ウキウキしながら八五郎が玄関を開けるとそこにいたのは男!(新朝)
「え?!お前は誰だ?」八五郎は吃驚!!
「どうも、旦那 あたしぁ、新朝っていう幇間です。今夜盛り上げますぜ」
「何、新町(浅草町)の太鼓?
あぁ、しまったあれは馬の骨だったか」
当時和太鼓には馬の皮が使われていました。
感想と元ネタ
「新朝の言葉を“馬の骨”だと勘違いした」滑稽噺🤣
とっても愉快です。
でも、これから本当の髑髏の幽霊が来る可能性もあるので八五郎は損したわけではないかも…。(最悪、アッー♂な展開に笑)
- 元ネタ
この噺の元ネタは明代に書かれた中国の笑話本「笑府」の「学様」と考えられています。
(ある男のもとに楊貴妃ではなく、張飛の霊が現れ…😱)