この人の為なら、死ねる。
そんな人が貴方にはいますか?!理屈ではなく、心から通じ合った関係の二人が。
紀元前の中国にいた二人の英傑の友情。
「刎頚の交わり」
成り立ちと意味を簡単に綴ってみました。
相入れぬ武と知
紀元前中国、春秋戦国時代の趙国に二人の英傑がいました
百戦錬磨の名将・武の「廉頗」
弁舌を持って秦の王をビビらせた・知の「藺相如」です。
趙が誇る二人の英傑の前には流石に当時最強国の秦も迂闊には手が出せません。
しかし廉頗は藺相如のことを嫌っていました。
「あの男は、口先だけで、ワシと同じ地位に登り詰めた!ワシは誰だ?百戦錬磨の将軍だぞ!」
廉頗将軍は秦に恐れられる名将、言い分は分からんでもない。
藺相如は謂わば、文官であり前線で指揮をとることはない。
どうも馬が合わない…。
廉頗はもし藺相如に会ったら「辱めを受けさせてやる」とまで言います。
誠に恐ろしい物は
勿論それは藺相如の耳にも届きます。
(あなたなら、誰かに悪口を言われていたらどうしますか?)
「廉頗将軍が…」
藺相如は廉頗を会う事を避けました。
時には出会いそうになったら敢えて違う道を進む。
それを見て藺相如の食客たちは言います。
「藺相如様、なぜ廉頗将軍を避けるのです。藺相如様と将軍は同格なはず!あそこまで、暴言を叩かれても、なぜ何も言い返さないのですか?!」
藺相如は微笑をして穏やかに言った
「今、秦国が攻め込まないのは、私と廉頗将軍がいるからです。もし、私が廉頗将軍と対立でもしてみなさい。どちらが倒れても、秦にとっては好機になりましょう。国の事を思えば、個人の恨み言などどうでもいいのです。」
廉頗に対する多少のショックと、憤りは流石にあっただろう。
だが、それ以上の大義を持つ藺相如の言葉に食客たちは首肯きます。
それは、廉頗将軍の耳に届きます。
刎頚の交わり
藺相如の国を想う気持ちと、浅はかな自分を深く戒めます。
「ワシはなんてことを…」悔やんでも、悔やみきれん。
廉頗は藺相如の屋敷に赴きます。上半身裸そして鞭を持って。(何のプレイだ…)
「藺相如殿、ワシはそなたの考えを露知らず、何と邪な考えを抱いてしまったことか!
これは、ほんの償い。どうか気が済むまでこの鞭でワシを打ってくだされ。」
藺相如はすぐさま、服を着させ、廉頗に対して優しく言いました
「何を言いなさる廉頗将軍。貴方がいての趙国ではないか。これからも、共に趙国を支え続けましょうぞ!」
廉頗はあまりの寛大さに心撃たれて、云った。
「藺相如殿、ワシはそなたのためなら、例え首をはねられても構わない」
「廉頗将軍、私もですよ。」
雨降って地固まる。固く握手を交わした。
「この人のためなら、命を捧げられる」これが、刎頚の交わりです
廉頗と藺相如は唯一無二の親友になり、秦国はこの二人が健在のうちは、いよいよ手出し出来ませんでした。