【書評】夏目漱石 吾輩は猫である【猫から見た人間社会の可笑しさ】

「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」

これ以上に有名な書き出しがあろうか?!

改めて日本語の表現って凄いなと思う。

これが英語だったら「I am a cat」で終わってしまう。

さて、本題に入ろう。

この小説、小説という体をとっていない。

話が一本道ではないのだ。小話を詰め込んだみたいな、小説。だが、面白い。どこから読んでも。

ペラっと頁を捲ったら、クスッと笑えるのも魅力の一つだと思う。

登場人物

まず「吾輩」

名前はない。猫目線の、人を上から見た様な、言い回しがとても面白い。

「くしゃみ先生」

吾輩の飼い主。英語教師、ジャムを舐めまくる変人笑(漱石がモデルらしい)

「迷亭」

くしゃみの友人。ホラ話ばかりしているが、憎めない存在

「寒月」

くしゃみの元生徒。比較的、常識人。結構イケメン。

他にも、意地悪な金持ち金田、ハゲがあるくしゃみ夫人など個性が強い登場人物が多いのが魅力。

猫目線の人生論

何と言っても、吾輩の人を見通した様な、哲学的な、そして珍妙な語り草が癖になって、頗る面白い。

吾輩は大人しく三人の話しを順番に聞いていたが可笑しくも悲しくもなかった。 人間というものは時間を潰す為に強いて口を運動させて、可笑しくもない事を笑ったり、 面白くもない事を嬉しがったりする外に能もない者だと思った。

くしゃみ、迷亭、寒月の猥談を聞いている時の吾輩。

遠く離れて、聞いてみると、別に面白くも何ともない。そんな話、結構あるだろう。だが、吾輩の言い方は余りにもキツい笑

…つまらない😑。吾輩は抜け出して、恋焦がれている三毛子の所に行くのだが…。

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呑気(のんき)と見える人々も、心の底を叩いて見ると、どこか悲しい音がする。

人が持つどこか滑稽な哀愁、無理して不安を取り除こうとする姿。くしゃみ先生も迷亭にも、何処か、心の中に孤独を持っている…。

終盤の台詞、散々軽口を叩いていた吾輩だが、決して人が嫌いではなかったことが窺える。

達観した猫ならではの深い言葉。漱石の文章で1番すきかも笑。 ほら?

どこか、悲しい音がするでしょ、貴方も。

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